これから何処へゆこう。
 
 
 
■「とにかくね、ネオ・クラシックってのが一番危ないんだ」
 二十代の終わりらしい男がカウンターの真ん中で言った。
 隣に、去年の新入社員らしき女性が座っている。
 男は酒の解説をしている。女はうなづいている。
 小さなケーキが運ばれてきた。蝋燭も何本か立っている。
 誕生日であるらしい。
 このホテルのバーも、すこし混み合ってきた。
「ここで、伴奏」と、太ったバーテンが言う。
 隣にいた我々は、厳粛なる結婚式の調べのイントロを、ひらがなで歌った。 
「おいおい、ちょっと待ってくださいよ」
 と、男が急に真面目な顔になる。
「いかんよなあ」
「これから何処へゆこう」